伯爵と雇われ花嫁の偽装婚約
店が休みの日、すなわち、レッスンの日。
礼儀作法の教師から、「最初の頃よりかなり美しい所作が身に付いてきましたね」と、初めて誉められた。
これまで無我夢中でやってきたので、思いがけない言葉が嬉しくて、「やった!」という風にその場で床を蹴って跳ねると、教師は眉をひそめ、「まだまだですわね」とため息をついた。
クレアも慌てて背筋を伸ばす。
そして、さらに優雅な所作を極めるべく、午前の厳しいレッスンが続いた。
その後。
昼食を終えて、一息ついていると、ローランドがクレアに告げた。
「今日のダンスのレッスンはお休みでございます」
「え?」
「先ほど先生から連絡がありまして。急用で都合が悪くなり、今日は来られないとのことです」
「……そう……」
始めた頃は、体が痛くてどうしようもなかったが、このところ、体もだいぶ軽く動くようになり、ダンスのレッスンも楽しみになってきていた分、クレアは少し落胆した。
だが、仕方ない。今日は一人で練習しよう。
ライルは今日も外出していて、不在だ。
ホールの中心に立ち、相手がいると思って軽く礼の姿勢を取る。
そして、これまで教えられたステップを頭の中で思い出しながら、くるくると一人で回る。
一時間ほどして部屋に戻ると、ジュディが入浴の用意をして待っていてくれていた。
休む間もなく、一心に踊っていたので、少し汗をかいてしまった。肌を流れるお湯の温度が心地よい。
「まだ晩餐までお時間がございます。これからいかがされますか?」
入浴後、クレアの髪を乾かし、ブラシをかけながらジュディが尋ねた。