伯爵と雇われ花嫁の偽装婚約
はぁ……、とライルは小さく息を吐いた。
何をやってるんだ、俺は……。
自分の腕の中には、全く警戒心の無い寝顔を見せるクレアがいる。
自分で作り出した状況とはいえ、ライルはこの光景に戸惑いを隠せなかった。
数時間前、外出先から帰宅すると、クレアの午後のレッスンは中止になったとローランドから報告を受けた。
クレア付きのメイドから、図書室にいることを聞き、クレアの姿を探しにそのドアを開けると、ソファーに座ったまま眠りこけている彼女を見付けた。
起こさないように、静かに横に腰を下ろすと、かくん、とクレアの頭が揺れて、そのままライルの肩にもたれ掛かった。
起きる気配は無い。
このままでは体勢が辛いと思い、クレアの膝上の本を閉じてテーブルに置くと、ライルは彼女の体をそっと抱き上げた。
クレアの部屋のベッドに、ゆっくり下ろす。
その時、無意識のうちにクレアが自分の服を掴んでいることに気付いた。
その手を外して、そのまま立ち去ることは可能なはずだった。だが、その姿が急にいじらしくなって、離れたくない衝動に駆られた。
自分も体を横たえると、クレアの体をそっと引き寄せ、抱きしめた。
入浴を済ませたのだろう、石鹸の良い香りがする。その髪を、優しく撫でた。