愛と音の花束を
椎名氏は緊張する様子もなく、ヴァイオリンを構えた。

ふぅん、メンタル強いんだ。
人前で弾かされるのって緊張して当たり前なのに。

彼はゆっくりめのテンポでスケールを弾き始めた。

デタッシェというのは一音一音区切ってキコキコ弾くやつ。

うん。まあまあ。
リズムが一定でぶれないのはポイント高い。

「はい、結構です」

そう言い、コンマスは教本のページをめくる。

「2オクターブのD-durいってみましょう。8音スラーで、僕が叩くテンポに合わせて」

さっきより少し早めのテンポ。
今度はポジション移動がある。
無事上がれたけど、下がる時にわずかに外した。

次、moll、つまり短調を指示されても動じることなく、すらすら弾いたのにはポイント加算。
ちゃんとmollのスケールも練習してる人は案外少ないのではないかと思う。

その後いくつか弾いてもらい、5ポジまでは何とかいけるけど、その上はまだまだのレベルであることが判明。

やはり、高音になるとゴツい指を持て余してる感じ。女性の指であれば順番に並べていくと半音階がとれるところ、彼のような指だと、置き換えが必要となる。

ともあれ、高音があまり出てこないセカンドヴァイオリン決定だな。

セカンドヴァイオリンは、ファーストヴァイオリンのオクターブ下でメロディを支えたり、内声を奏でて曲に厚みや深みやニュアンスを加えたり、刻みやハーモニーで曲を彩ったりする。
ファーストほど高い音は出てこないし、ファーストより音型が易しいことが多いので、アマオケでは楽器経験が浅い人が集められる傾向にある。
とはいえ、CDでは聴こえない、耳慣れない音やリズムをとらなくてはならないことも多いので、音程感覚やリズム感覚はむしろ必要となる。
彼には頑張ってもらいたい。
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