愛と音の花束を
「歯の治療が終わって、まだ痛みが続くようだったら、改めて作りに行こう」


“ひとりで行くからいい”
と、喉元まで出かかった言葉を飲み込む。

朝の私だったら、
躊躇いなくそう言っていたと思う。

でも。


また、こんな幸せな時間を過ごせるのだとしたら。

この男を独占できるのだとしたら。

一緒に出かけるのも悪くない。


と、ここまで思考が及んで、久しぶりのこの思考回路が何を意味するのか、自覚しそうになって、

思わず力一杯奥歯を噛み締めてしまい、

「イタっ」と顔をしかめた。


すると。

目の前の男の片手が伸びてきて、顔を掴まれた。

正確には、親指と中指で、左右の顎関節を挟まれた。


「こら。また難しいこと考えて、奥歯グッとしたでしょ」


指の感触と体温。
私に向けられた、いたずらっぽい笑顔。


体温が、一気に上がる。
胸がぎゅうっとなる。
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