愛と音の花束を
並んで廊下を歩く。

「そのトートバッグ、オシャレ」

椎名は私のバッグを見て言った。

「あ、うん、この間ミュージアムショップで買ったやつ」

楽譜やスコアを入れる大きい布バッグがだいぶくたびれていたところ、この間、絵柄がオシャレでちょうどいい大きさのキャンバス地のトートバッグに出会えたので、迷わず購入したのだ。

そういえば、と椎名を見ると、例の『考える人』のTシャツを着ている。

「それ……」

「そう。この間のやつ」

どちらからともなく、笑う。

あぁ、いいなぁ。ささいな幸せ。

そこでちょうど公民館の外に出た。

「今日は若者たちとごはん行かないの?」

私がきくと、思いの外真面目な声で答えが返ってきた。

「うん。ちょっとやらなきゃいけないことができたから、今後少なくなるかな」

「そう」

「じゃあまた、今度の予約時間でお待ちしてます。ちゃんと身体ほぐして寝ること」

「了解。お疲れ様」

お互いの車へと向かう。

こうして、少しでも話せるだけで、へこんだ気分も回復する。

今はこれで充分だと思いながら。



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