愛と音の花束を
椎名は立ち上がった。

「以上、いつも励ましてもらってる俺からの告白と励ましでした。精神集中の邪魔してごめんね」

そう言うと、私の前を通り過ぎ、ヒラリとステージから客席に飛び降りた。

「椎名!」

私は慌てて呼び止める。

私の気持ちも伝えたい。

彼は振り返り、私を見上げた。

「私も、椎名と出会えてよかったし、一緒に音楽ができて嬉しい」

椎名は一瞬驚いた顔をしてから、

……泣き笑いのような表情を浮かべた。

「俺、たぶん今日の本番泣くよ」

「ちゃんと弾ければ泣いても笑ってもいいよ」

「はは、了解」

彼は笑って敬礼のポーズをしてから、去っていった。

……涙が一筋、頬を伝った。
さりげなく頬をぬぐいながら、心があたたかいもので満たされてることに気づいた。

もう、さっきので、充分だ。

今回の定演が終わったら、
ちゃんと、
結婚おめでとう、と伝えよう。


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