愛と音の花束を
ステマネのゴーサインで、ステージに足を踏み出す。
コンミスが後から登場するパターンではなく、みんなと一緒に入場する。

うわ。本当に満員のお客様! 初めての経験だ。嬉しいけど若干プレッシャー。


みんなが席に着いたところで、立ち上がり、オーボエの本多さんにうなづく。

彼はいつもの通り、落ち着いた様子で、リードを口に含み、唇を引き締める。

一発で、澄み切ったAの音が出た。

この音に、私をはじめ、どれだけのメンバーが安心することか。

管楽器のチューニングが終わると、弦楽器の番。

本多さんのAに、私のヴァイオリンのA音を重ねる。

よし。ぴったり溶け合ってる。

私がありがとう、とうなづくと、彼は音を止めて微笑んだ。

私は低弦から高弦へAを回す。
半年間頑張ってきた、みんなの顔を見ながら。

Aが合って、私が座ると、みんなが他の音を合わせる。

ああ、これ。この音。ワクワクする。
オーケストラのチューニングの音は、これから始まる音楽の世界への扉を開ける呪文だと思う。

そうして音がやみ、静寂が訪れる。

緊張が最高になるひととき。

三神君はどんな気持ちなんだろう。




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