愛と音の花束を
客席に戻ると、ステージセッティングが行われていた。
屋根が取り払われた2台のグランドピアノが向かい合わせで、手前側にどどんと鎮座している。
奥に弦楽器群と管・打楽器。
てっきりピアノは後ろに並ぶものだと思ってた。
まあ、ありえなくはない配置だけど、どれだけピアノ推しなんだ、と苦笑してしまう。
プログラムを開くと、『動物の謝肉祭』のピアノは、ファーストが那智、セカンドが早瀬先生。
那智がファースト、というのは嘘ではなかった。ファーストヴァイオリンではなく、ファーストピアノだったんだ。
コンマスは三神君。
セカンドトップが暁。
『白鳥』を弾くチェロトップはやはり真木君。
指揮は羽生さん。
私が以前この曲を弾いた時は、ピアニストがオケと合わせたことがないアマチュアだった。練習で合わせる機会も少ないまま本番に臨んだら、ズレが生じて崩壊の危機に陥ったという苦い記憶がある。その時はコンマスの暁の機転で乗り切ったけれど、今回はどうなるだろう。
メンバーの入場が始まった。
みんな、普通の演奏会同様、黒の礼服。気合いを感じる。
向かって左、ヴァイオリン側のピアノが那智、右のチェロ側のピアノが早瀬先生。
早瀬先生は黒のロングドレス。髪も後ろでひとつにまとめてから垂らしている。指揮をする時の燕尾服とはまた印象が違うけれど、その存在感はやはり只者ではない。
那智もスーツから着替えていた。
あー、かっこいいなぁ。
……はい。重症です。