愛と音の花束を
きらびやかなお祭りがはじけると、ものすごい拍手が沸き起こった。


指揮の羽生さんは最初にピアニスト2人を起立させ、拍手を受けさせた。

上気した顔ではにかむ那智と早瀬先生。

私も手が痛くなるくらいの拍手を送る。

よかったね。
一年前のリベンジ、充分に果たせたね。


カーテンコールで羽生さんが呼び戻されると、朗読の井上さんがおもむろにマイクの前に立った。

「ありがとうございます。それでは、アンコールといたしまして、動物にちなんだ曲を一曲……」

弦のみんなは準備せず、ニコニコして那智を見てるけど。

その那智は指のストレッチをしてる。

……何?

え? ピアノで何か弾くってこと?

「可愛らしい、ちょうちょの曲をお送りします」

ちょうちょ?
童謡、なわけないよね。

「ショパン作曲、12の練習曲 作品25より第9番『蝶々』」

ショパン⁉︎
しかもエチュード⁉︎
恥ずかしながら蝶々は知らないけど、ショパンのエチュードはどれもものすごい難しいことくらい、ピアノに疎い私も知ってる。

那智はふぅっと息を吐いてから、微笑みと共に鍵盤の上で手を躍らせ始めた。

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