愛と音の花束を
さて、もうひと仕事。

「今日から椎名さんのことを教育していただく方のところへ挨拶に行きますので、ついてきてください」

「はい!」

私は彼を連れ、ある女性の元へ向かった。

「樋口さん、すみません」

「お。来たね」

白髪混じりの髪を頭のてっぺんでお団子にして、エスニックな感じのチュニックを着ている、小柄な60代女性。

私の前にセカンドパートリーダーをされていた樋口さん。

家庭の事情で、拘束時間が多いパートリーダーができなくなったけれど、後ろの方で団歴が浅い人達と一緒に弾いて、アドバイスしてくれる。性格と言葉遣いはサバサバしてるけど、面倒見のいい人だ。

彼女に、オケ初心者である椎名を教育してもらうよう、事前に頼んでおいた。
教育は重要だ。その後のオケ人生に大きく影響する。
私はその点三神さんに教えていただいて、とても幸運だったと思っている。

「よろしくお願いします!」
と、椎名から頭を下げた。

「よろしく」

「樋口さんの言うことをよくきいて、よく見て、勉強してください」

「はい! ビシバシお願いします!」

「お、いいね。じゃあビシバシいくよ。ばっちり仕込んであげるから任せといて」

よし。これで心配事は減った。



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