愛と音の花束を
「あの音にはやられました。打鍵もペダリングもよく研究してるんでしょうね」
「研究といえばアーティキュレーションもそう。特に第一主題には唸ったわ」
ホワイエにて、早瀬先生と環奈がマニアックな会話を繰り広げている。気が合うらしい。
「感情に任せた荒い演奏に流れなかったですね」
「技術と構成と精神のバランスを保ったまま、ラストまで破綻せずに弾ききったのは圧巻。勉強になりました」
「知的な演奏っていうのはこういうことなんだなって」
「構成がすごく難しい曲なのに、根底に一貫して流れるものがあったから、支離滅裂にならなかった」
「そう!それは!」
2人は私を見つめ、瞳をキラキラさせながら、口を揃えた。
「「愛!」」
……私はため息をついてそっぽを向いた。
ホワイエで、団員とその家族・関係者でのレセプションが行われている。
今までは別会場で団員のみで打ち上げを行っていたけれど、参加できない人も多いため、今回からはホールのホワイエにケータリングで軽食を手配し、レセプションという名の打ち上げを行うことになったのだ。