愛と音の花束を



翌朝、那智に車で家に送ってもらう。
お互い仕事があるから、甘い朝というわけにはいかなかった。

身体はそれほどつらくない。無事に働けそう。
女性の身体への負担を最小限にとどめるなんて、全くどこまで優しくて自制心があるんだ、この男は。
そんな男に、昨日から何回惚れ直してるんだ、私。


家に着くと、那智は玄関先で親にちゃんと挨拶をしてくれた。
彼は持ち前の社交性を発揮し、親の好感を得て、爽やかに帰っていった。

見送った後、自室に行こうとすると、父に呼び止められた。

「今度何か決める時は、我々に相談してからにしなさい」

静かな視線。静かな口調。

言わんとすることは伝わってきた。

暁と別れることを決めた時は、親の気持ちなんて考えてもみなかった。
ただ、父のせいだと思ってほしくなかったし、心配をかけたくないと、相談せずに決めた。

あの時は、若くて、未熟だった。

うちは一般家庭とは少し違う。
家族で店をやっていくなら、避けてはいけないことだと今ならわかる。

「……わかった。そうする」

通じたらしく、父は少しほっとした顔をして、居間に戻っていった。



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