おためしシンデレラ
立ち上がって社長室にノックして入る。
「社長、7時に真歩さんリクエストのイタリアンの予約取れました」
「さすがマメ、仕事が早いな」
「ありがとうございます、タクシーも手配しておきますか?」
「頼む、お前たちも一緒に乗るやろ?」
「え・・・・・と、わたしは現地で合流します。ちょっと用事を済ませてから行きたいので」
胃もたれがするので行かないと言えば三村は和食にでも変えろと言うかもしれない。
折角の真歩のリクエストだ、聞いてあげたい。
三村が莉子の顔をじっと見る。
「・・・・・お前、顔色悪くないか?」
莉子が思わず頬に手をやった。
「気の所為やないですか?わたし、元気だけが取り柄ですから」
軽い調子で返しておく。
あの夜以来、時々三村の視線に莉子を労わるような色が混ざるのを感じる。
気を遣わないでくださいーーー
何度そう言いかけただろう。
あの夜 三村の優しさを知ってしまった。
三村の熱を肌に感じてしまった。
だけど
罪悪感なんて持たなくていい。
わたしが初めてだったからなんて。
あの夜、特別な感情がないのに肌を合わせてしまったことを後悔するのは莉子だけで充分だった。