おためしシンデレラ


莉子は買ってきたものを冷蔵庫にしまっていき、今晩使うものだけ出した。冷蔵庫の中はドレッシング類とお酒とミネラルウォーターのみ、キッチンの奥にある食料庫の扉を開けると箱買いされた栄養補助食品のスティックと封の切られていないお米。

健康に気を遣ってんだか遣ってないんだか。莉子が小さくため息を落とす。

早々に奥さんを貰った方が良いんとちがう?ああ、でも社長のカノジョたちはキッチンに立つような人たちではないかな・・・・・。爪が割れるとかネイルが剥げるとか手が荒れるとか色々気にしそうな方達やしーーと莉子は心の中でこっそり悪態をついた。

一旦自分にあてがわれた部屋に行き、スーツケースからエプロンを取り出し、キッチンに戻って調理を始める。幸いなことに調理器具は全部高そうなものが揃っている。

すると後ろに立って三村が手元を覗き込んだ。

「何を作るんだ?」

「鶏の照り焼きとお味噌汁とかぼちゃサラダを」

「へぇ」

「今までのカノジョはもっとオシャレなもの作ってくれましたか?」

「いや、オレ生活エリアに女は入れへんから」

思わず振り返って背後霊のように立っている三村を見る。

「・・・・・そうですか」
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