おためしシンデレラ
ピカピカのキッチン。
お鍋もフライパンも誰もが知るメーカーの高いもので使うのが勿体ないような気がする。
「社長、お掃除って週何回きてもらってるんですか?」
味噌汁に入れるネギを刻みながら莉子が問い掛けた。
「ハウスクリーニングは週2だな」
「それ、わたしがいる間は一旦休止してください」
「何で?」
莉子が恐ろしく切れ味の良い包丁を置き、背後の三村に向き直る。
「ハウスクリーニングなんて月いくらですか?普通のサラリーマン家庭では週2なんてしませんよ」
「ほな誰が掃除するんだよ」
「わたしと社長でしょうね」
三村がしばし固まった。
「お前、正気?」
「だってハウスクリーニング利用してご飯はデリバリー、みんなそうしたら楽なんくらい分かってますよ。しないのはお金の問題です。ウチの会社、共働き世帯にはハウスクリーニングと食事のデリバリー分のお給料上乗せとか無理ですよね?」
三村が黙る。
「一般的な家庭の問題が知りたければそんな風に暮らしてみるしかないですよ」
莉子は部屋の隅にお掃除ロボットがあることに気付いていた。キッチンには食洗機もある。お風呂だってきっと自動でお掃除してくれる最新型だろう。