おためしシンデレラ


莉子がトレイからお茶と和菓子を出し、三村の前にそっと置いた。

「社内会議で良かったと思いましょう。幸い仕事は山積みですし、いくらでも時間は潰せます。女性に厳しい会社はこの先発展しませんよ」

さあ、サクサク働けと言わんばかりに莉子がデスクの隅に積まれた決済が終わっていない書類を三村に押しやる。

三村は軽く息を吐き、和菓子の包み紙を開いて一口で食べ切った。

「・・・・・お前だけやな、イラついているオレに意見してくるの」

「『猛獣使いの勇者』なんて呼ばれてますからね、ご期待に添わないと」

しれっと答えた莉子はご用があれば呼んでくださいくださいと社長室を辞した。

莉子は自分のデスクに戻り、三村の予定を確認する。今日は社外での約束もないので会議がずれこんでも大丈夫そうだ。

内線が鳴る。

『社長のご機嫌直った?』

穂村からだ。

「はい、すっかりではないですけど」

『さすが豆田くんだね』

「課長の仕事やと思いますけど」

『僕やと社長と真っ向勝負になって余計に拗れるね』

自信満々で言う穂村に腹が立つものの、その通りだと思うので何も言えない。
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