おためしシンデレラ
「みんな子供の容態を聞く前に仕事の話をするのに豆田さんは違うのね」
苦笑いしか出ない。
社長が怒って会議室を出ていけば周囲は焦る。怒らせた張本人が出社してくれば、もう社長の機嫌を損ねることはないだろうなと気を揉むのは当たり前で。しかし誰も子供のことを聞かないとは余裕無さすぎじゃないかと莉子は情けなくなる。
「ありがとう、社長のご機嫌直してくれたんだってね。子供は母に病院に連れて行ってくれるようにお願いしたから大丈夫よ」
「いえいえ、それも含めてわたしの仕事なので。それにああ見えて意外と扱い易いですから」
なんせ一緒に住んでるくらいだし。
「社長も豆田さんにかかると形無しね」
思わず吹き出した市ノ瀬さんが傍らのバッグから可愛らしいイラストの描かれた箱を取り出して莉子に差し出した。
桃太郎がお供の動物にあげた有名なお菓子だ。
「少しだけど3時のおやつにどうぞ」
「ありがとうございます、社長といただきますね。クールなフリしてますけど甘いモノ、好きなんですよ」