おためしシンデレラ
履歴書を曖昧な笑みを浮かべた穂村に返し、一礼してから部屋を出た。
課長は一体何の許可を取ろうとしたのだろう。あの意味深な笑いが引っかかってスッキリしない。
席に戻り、三村に頼まれた途中になっている書類を作成する。このまま終われば今日は定時少し過ぎに帰れそうだ。
三村は今晩は穂村とともに取引銀行との会合に出るので夕飯は要らない。
偶にはウィンドウショッピングでもして、美味しいものでも食べて帰ろうか。
三村と暮らし始めて、仕事が終わって帰ってからも忙しなく動いていて莉子は自分のための時間があまり取れていない。
少し気分が上がってきた。
「なんや、なんか楽しそうやな」
社長室から出てきた三村が莉子に声を掛ける。
「いえ、偶には帰りにショッピングでもと思いついて」
三村の手にしたスーツのジャケットを莉子が取り、後ろから三村に着せ掛けた。
「今日の相手はしつこいからな、多分帰りは日付けが替わる頃になる。先に寝てろ」
「かしこまりました」