おためしシンデレラ


「分かった」

莉子が返事をする三村にスーツのジャケットを後ろから着せる。

「行ってくる」

「あ、社長!」

振り返った三村に莉子がポケットティッシュを差し出した。

「ハンカチはお持ちですよね?」

「おう、サンキュ」

慌ただしく三村が部屋を出て行き、廊下でまた派手なクシャミをしているのが聞こえてくる。


莉子はもう一度三村のスケジュールを見直し、どこか調整がきくところがないか考えるけれど、今日に限ってどれも三村がいないとダメなものばかりだ。

ツイてない。

せめてと思い、真野に電話をし、応対した看護師に眠くならない薬をお願いしておく。


まあ、鼻水とクシャミがどんなに酷くても死んだりはしないけど・・・・・。


結局、代わりの薬を飲んでも症状は改善せず、夕方になる。


「せめてパーティーは頃合をみて抜けてください。穂村課長にも伝えてありますから」

「アホ、花粉症くらいで仕事抜けられへんわ」

真っ赤な目をして鼻水啜って、クシャミ三昧のオトコマエはあんまり見たくないですけどね、と莉子が心の中で呟く。
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