おためしシンデレラ


中田が無表情で黙り込む。


莉子も右肩にかけたショルダーバッグの持ち手を両手でキュッと握り黙って中田の返事を待った。

「わかりました。どうやら僕は貴方に無理強いをしていたようですね」

穏やかな笑みを浮かべた中田に莉子はホッとする。

莉子が「申し訳ありません」と丁寧にお辞儀をすると中田も無言で頭を下げた。

中田の後ろ姿を見送り、莉子も歩き出す。良かった、分かってもらえて。食事くらい何でもないと言う人もいるかもしれない。それでも莉子は中途半端なことはしたくなかった。

恋愛偏差値も経験値も低い自分が世の中の熟れた女性みたいなことをしてはいけないのだ。

マンションのエントランスを通り、小林の姿を見かけ、会釈だけをしてそのままエレベーターに乗る。

どうせ明日には出て行くのだし、小林の反応は見ないようにした。

エレベーターをおりてバッグから鍵を取り出す。ドアを開けて玄関に入ると一気に身体の力が抜けた。



そして



違和感を覚える。
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