イケメン貴公子のとろけるキス

「なにが?」

「嘘つきは、指を噛み切られるんだよ?」

「だからなに?」


“ミナは嘘つきじゃないのか”と言いたいところなんだろう。
心配そうな顔をしておきながら、ルカが口では意地悪なことを言う。

迷わず、眉間に皺を寄せて睨みつける。


「冗談だよ、ミナ。ほら、そんな顔をしないの。かわいい顔が台無しだって言っただろう?」


ルカは私の頬を指先でひと撫でした。

どんなに怒った表情をしていようが、ルカのその指は一瞬で気分を変えてしまう。まるで魔法の指先だ。
寄っていた皺はあっという間に消えて、頬が熱を持つ。


「それじゃ、ミナから先にどうぞ」


観光客の列に並んでいた私たちに、ようやくその順番が回って来た。

こんなの作り物なんだから、全然怖くない。
噛まれるなんて、ありっこないのだ。
聖母マリア像から血の涙が流れたという話は聞いたことがあるけれど、真実の口に噛まれた話はいっさい聞かない。
だから大丈夫。

< 30 / 91 >

この作品をシェア

pagetop