イケメン貴公子のとろけるキス

「さっきは『怒るな』って、『台無しだ』って言ったくせに」


ところがルカときたら、「ミナが悪いんだよ」と私のせいにした。
いったい私がなにをしたというのか。


「どうして?」


つい強い口調で問いただす。


「怒ったときの目がセクシー過ぎるから。笑顔も好きだけど、ミナの怒った顔も好きなんだ」

「なっ……」


しっぺ返しをされた気分だった。

そんなことを言われてしまっては、怒りは一気に影を潜める。
それはもう瞬殺だった。
ルカに真っ直ぐ見つめられて『好きだ』なんて言われたら、誰だってそうなるに違いない。


「でも、ミナがそこまで心配してくれて嬉しい」


そのまま抱き寄せられた。

ルカはずるい。
たったひと言で、私を怒った顔にも笑顔にもしてしまう。
たったひとつの動作で、私の心を捕まえてしまう。

好きになっちゃいけない。
そうブレーキをかけても、それ以上にアクセルのほうが強力だった。

旅先の出会いなんて、約束された未来のないほんのひとときのものなのに。

ルカに向かう気持ちは、時間が経つにつれて大きなものになっていった。

< 33 / 91 >

この作品をシェア

pagetop