イケメン貴公子のとろけるキス

◇◇◇

翌日、どうしても抜けられない仕事があるというルカは、私ひとりでも平気なように半日のヴァチカン市国ツアーへ申し込んでくれた。

ツアーは十人程度の日本人グループのものだった。
私以外はみんなカップルで、つい羨む気持ちが出てしまう。
それでも、ルカがせっかく手配してくれたのだからと気を持ち直し、ガイドの説明に耳を傾けた。

世界最小の独立国家で、世界のカトリック教会の総本山。
まさに芸術作品の宝庫で、柱の一本一本、床のタイルの一枚一枚までもが美しい。

必見だと連れて来られた、サンピエトロ寺院から眺める絶景には、思わず絶句してしまった。
朝日を浴びたばかりのローマの街並みが、薄いオレンジ色に染まっていて、まさに世界一凝縮された『美』だった。

これをルカと一緒に見られたら、どれだけ良かったか。

常に浮かぶルカの顔は、何をしていても、どこを歩いていても私の中から消えることはなかった。


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