イケメン貴公子のとろけるキス

「みんなも知ってのとおり、今日からうちに新たなメンバーを加えることとなった」


そこまで部長が言うと、みんなは思い思いに椅子から立ち上がった。
そして、部長のほうへ向き直る。
私も倣ってそうするしかない。
息が詰まるほどの極限状態で、部長の隣へおそるおそる目を向けた。

ルカだった。
夢じゃない。
幻でもない。
久しぶりに見たルカが、本当にそこにいた。

私に気づいた彼は、初めて会ったときのように眩しい笑顔を浮かべた。

一瞬にして、イタリアへ行ったときの自分に時間が巻き戻される。
二ヶ月以上が経って薄れていたはずのルカの存在は、ひと目見ただけで私の中に鮮やかに蘇ってきた。

熱く見つめる眼差し、優しいエスコート、楽しく弾む会話。
最後の夜のこと。
今、思い出しただけでも胸がいっぱいになる。


「ルカ シモーネです。日本で働くのは初めてなので、みなさんにはご迷惑を掛けてしまうと思いますが、一生懸命がんばりますのでどうぞよろしくお願いします」


流暢な日本語にはみんなが驚いた。
各デスクを回って、ひとりひとりと握手を交わす。

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