イケメン貴公子のとろけるキス

それを待つ間にも、早鐘で心臓がオーバーヒートしてしまうんじゃないかと思った。

いよいよ私のところへルカが来る。
小夜さんと握手をした彼が、私の前に立った。
光を見ているわけでもないのに、ルカがとても眩しくて直視できない。


「ミナ……Mi sei mancata」


空港で私を初めて出迎えてくれたときの言葉だった。

今の今まで日本語で話していたのに、急にイタリア語なんて。
それじゃ私は理解できない。

握手のつもりでそっと手を差し出すと、ルカがその手を強く引っ張る。
そして次の瞬間には、ルカの腕の中にすっぽりと収められてしまった。

思いがけないことに、声も出せなかった。
その代わりに、部署内から「キャッ」という小さな声が上がる。
なにが起きたのか、私にはすぐにわからなかった。


「ちょっと、ルカ! やりすぎ!」


小夜さんからたしなめられて、ルカは私をパッと引き離した。


「ごめんなさい」


ルカが肩をすくめると、小夜さんは「ほんとしょうがないんだから」と呆れ顔を浮かべる。

ほんの数秒の抱擁で、私の心は完全に彼へと舞い戻ってしまった。

< 56 / 91 >

この作品をシェア

pagetop