イケメン貴公子のとろけるキス
◇◇◇
「アイツだろ」
お昼の社員食堂で、唐突にそう声を掛けてきたのは滝本くんだった。
持っていたランチトレーを私の前へ置く。
今日は、ほかの同期の顔は見当たらなかった。
「なんの話?」
サラダをつまみながら返す。
「すっとぼけんなよ。イタリアで“なんか”あったヤツだ」
そうだった。
ルカとの経緯をはっきりと話をしたわけではないけれど、滝本くんには察知されていたんだった。
話題がそこに及んでしまって脈が乱れる。
ルカは朝の挨拶の後、社内を案内するという部長に連れられ、午前中いっぱい戻ってはこなかった。
私のほうはというと、久しぶりにルカに会って動悸はしっぱなしだし、仕事にも身が入らない。
風邪をぶり返したみたいに、身体中にいろんな症状が出ていた。
来年度の企画を作る時期に差し掛かっているというのに。
「図星だろ」
違うと即答できなかった。