イケメン貴公子のとろけるキス

その声の出所を探して首を伸ばしていると、社員食堂のあちこちから黄色い声があがる。
そして、それがルカに対するものだとわかると、脈がありえない速度で打ち始めた。

女子社員たちの反応を気に留めることもなく、大きく手を振りながら彼がこちらへ近づいて来る。

海外に数多くの支社があることから、本社にも外国人の従業員はたくさん勤務している。
にもかかわらず、ルカに対して女子社員が色めきたつのは、やはりその容姿のせいだろう。
大勢の中であっても心惹かれてしまうのは、私だけではないようだ。


「ミナ!」


イタリアのときと変わらず、爽やかでいて人懐こい笑みで私の名前を呼ぶ。
そして、人目もはばからず座っている私に抱きついた。
今朝、部署でそうしたように。


「――ル、ルカってば!」


イタリア人ならではの挨拶なんだろうけど、ここは日本だ。
しかも、周りの女子たちからの“なに?”という視線も痛い。
ドキッとしたのをひた隠しにし、今にも頬と頬のキスをしかけるルカの腕を無理に振りほどいた。


「ルカ、ここはイタリアじゃないから」

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