イケメン貴公子のとろけるキス

そう言いながらも、親しかった小夜さんとすら交わさなかった濃厚なハグに、心の中は浮足立っていた。

私にだけ。
そう思いたい気持ちがあった。

表情を引き締めてルカを見ると、彼は少し戸惑った様子で私から一歩遠ざかる。
数秒間、目を瞬かせた後、私の前に座る滝本くんを見た。


「ミナ――」


ルカがなにかを言いかけたときだった。


「ルカ―!」


周りの人たちがみんな目を向けそうなほど大きな声でルカを呼ぶとともに、ものすごい勢いで彼の胸に女の人がひとり飛び込んできた。


「ルカ、会いたかったのー!」


胸の中からキラキラした目で彼を見上げる。


「……美穂(みほ)?」


営業部の吉井美穂さんだった。

私よりひとつ年上の二十八歳。
切れ長の二重瞼にショートカットの髪。
快活な印象を与える美人だ。

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