イケメン貴公子のとろけるキス

◇◇◇

えっと……どこだろう?

スーツケースを引っ張って到着ゲートをくぐり抜け、人混みの中に目を凝らす。

小夜さんに導かれるまま、私はのこのことローマへやって来てしまった。
飛行機が到着するまでは良かったものの、いざ降り立ってしまうと、ひとりだという不安が一気に押し寄せる。

……本当に大丈夫なのかな。
ルカって人、ちゃんと迎えに来てくれてるのかな。

まるで嵐に呑まれた一艘の小船。
外国人の波に揉まれて、寂しさが急に込み上げる。
名前の書かれたプレートを手にした、たくさんのガイドたちがひしめいている。
その一枚一枚を順番に目で追っていると、不意に私のスーツケースがフワリと浮いた。

――ひゃあっ! スリ!?

イタリアといえばスリだと言っていたテレビの情報番組を咄嗟に思い出して、心臓がドキリと嫌な音を立てる。

驚いて振り返ると、長身の男性が人懐こい笑みを浮かべて立っていた。


「ミナさん」


その彼が、私の名前を口にする。

……もしかして、この人がルカさん?

ポカンとする私に、真っ直ぐな視線が注がれる。

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