イケメン貴公子のとろけるキス

麻巳子は首を捻って思案顔だ。

でも、私にもそう見える。
なるべく見ないように意識しているのに、その意思に反してふたりが一緒にいる姿を目で追ってしまう。

そのときのルカと美穂さんは、麻巳子が言うように恋人同士のようなのだ。
ボディタッチは当たり前。
きっと甘い言葉をささやき合っているだろう唇を、耳元に寄せて。

……これじゃ単なる嫉妬だ。
大きなため息が口から漏れた。


「そんな噂話はやめやめ。ところで麻巳子たちのほうこそどうなんだよ。町田ともそろそろ結婚を考える時期なんじゃないか?」


ナイスアシスト。
付き合いの長い町田くんと麻巳子の話題は、同期のみんなにも興味のあること。
私とルカの間にあったことを知らない麻巳子には申し訳ないけど、滝本くんのおかげで助かった。

ところが、ホッとしたのも束の間のことだった。
同期のうちのひとりが、「あっ」と口を半開きにして店の入口を指差す。
誘導されるようにそちらを見た私は、自分の目を疑ってしまった。

そこから入って来たのは、ルカだったのだ。
……美穂さんを連れて。

会社の近くにあって、日頃から社内の人間が多く訪れる店ではあるけれど、どうして今日のこの時間に鉢合わせなんてするのか。
自分の運勢のなんと悪いこと。
思わず呪いたくもなる。

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