イケメン貴公子のとろけるキス
流暢なイタリア語が小夜さんの口から飛び出した。
「そう、そんな感じです」
初めて会ったときとうちの部署に異動してきたときに、ルカが口走った言葉だ。
発音は定かじゃないのに、なぜか心に引っ掛かったままだった。
「会いたかったっていう意味よ」
「それじゃ、英語で言う、Nice to meet youと同じような感じですか?」
「それは違うわ。そういう時は“Volevo conoscerti.(ヴォレーヴォコノーシェルティ)”だから。“Mi sei mancata.”は、恋人に対して感情を込めて言うような時ね。“お会いできて光栄です”じゃなくて、まさに“会いたかった”ってことよ」
小夜さんの説明で意味は分かったものの、それはちょっとおかしい。
異動してきたときならまだしも、イタリアの空港に出迎えてくれたときは初対面だ。
それなのに“会いたかった”なんて。
「……誰に言われたの? ルカ?」
探るように私の顔を覗く小夜さん。
顔を引き気味に小さくうなずくと、『ハハーン』なんて腕を組んだ。