イケメン貴公子のとろけるキス

「その顔だと、やっぱり覚えていないのね、彼のこと」

「はい……?」


首を傾げる私に、今度は小夜さんがため息を吐く番だった。


「去年の十二月に創立二十周年パーティがあったでしょう? その時、ルカもこっちに来たのよ?」

「えっ、ルカが……?」


日本に? あのパーティに来てたの?
小夜さんから告げられたのは驚きの事実だった。


「ワインを洋服にこぼしちゃった男の人のこと、覚えてない?」


小夜さんの言葉に、記憶回路を高速で逆回転させる。

ワイン、ワイン……。
そういえば……。

ぼんやりと蘇ってきたのは、あるシーンだった。
ボーイからワインを受け取った後、振り返った弾みで私がぶつかったことで胸のあたりに大きな染みを作ってしまった人がいた。
その後、私が慌てて代わりのYシャツを用意してあげたのだ。

あの人がルカだったの……?

< 79 / 91 >

この作品をシェア

pagetop