イケメン貴公子のとろけるキス
……ダメだ。
あれほど目立つ容姿をしているのに、顔は思い出せない。
あのときは世界各国の支社から人がたくさん集まっていたから、ほかにも相手をすべき人がいて、彼ひとりについている訳にはいかなかったのだ。
そういえば、あのとき確か……。
デスクの引き出しを漁り、名刺のファイルを引っ張り出す。
いろんな人と名刺交換をしたけれど、その中に彼の分もあったかもしれない。
ルカ、ルカ、ルカ……。
一枚ずつファイルをめくり、その名前を探す。
忘れるとルカに誓ったのに、その存在を一刻も早く確認したかった。
“Luka Simone”
――あった!
ようやく見つけたそのとき、ルカ本人に会えたようで嬉しさが込み上げた。
でも次に私を襲ったのは、切なくて行き場のない想いだった。
その名刺をそっと引き抜く。
思わず、ルカを抱きしめるように胸に押し当てた。
こんなにも恋焦がれているのは、私だけ。
想うほどに、ルカまでが遠い。
何気なく名刺を裏返す。
するとそこに、走り書きの文字を見つけた。
“Voglio starti sempre vicino.”