イケメン貴公子のとろけるキス
小夜さんの最後の言葉に脱力してしまった。
「もしかして勘違いしてるんじゃないかなと前から思ってたんだけど、色恋沙汰に外野がゴチャゴチャ口出しするものじゃないな、とね」
あの噂話は、正真正銘の噂話だったのだ。
曇ったフィルターがかかった私の目は、疑うことしかしなかった。
疑念をたっぷりのせた視線しか送れなかった。
それはすべて、ルカへの恋心がさせた卑屈な誤作動。
「ほら、早く行きなさい」
小夜さんに背中を押されて立ち上がる。
企画開発部を飛び出した。
ルカ、早く会いたい――。
その一心で通路を駆け抜ける。
エレベーターを待つ時間さえ惜しくて、隣の非常階段へ足を向けた。
ヒールの音を響かせて、六階から一階まで一気に下りて行く。
呼吸が苦しい。
でもそれ以上に、許容範囲以上に募ったルカへの恋しさで胸がはちきれそうだった。
一階に着き、非常階段の鉄製の重い扉を力任せに押す。
誰もいなくなった受付の前を通り過ぎたところで、入口の自動ドアを抜けるルカの背中を見つけた。