人事部の女神さまの憂い

始まった日、誠実に言葉を紡いでくれたと思っていたけど、思い返すと肝心な言葉は一度もでていない。

そして、それからも彼は「かわいい」とは何度も言ってくれるけど、私が本当に聞きたい言葉は言ってくれない。

だから私もそんなこと口にできないし、柏木さんが忙しそうなのもわかってるから、自分から連絡するのも気が引ける。そんな遠慮もあるけど、正直いうと恐いのだ。私だけこんなにはまってしまっているのに、彼に気持ちがないことを知るのが、恐い。


キッチンの床にへたりこんでいると、頭に手のぬくもりが降ってきた。

見上げると、口の端をわずかに上げて、きっと微笑んでいるつもりの立花さん。

「やっかいなのにひっかかっちゃったねぇ」

いつものからかい口調ではなく、柔らかく響く声。


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