人事部の女神さまの憂い
巧がわかりやすいくらいに、混乱している。藤木さんは焼酎を飲む手を止めて、じっと巧を見て
「似てるね」と一言。
どうやら藤木さんは状況を一瞬で理解したようだ。さすが。だけど巧はまだ混乱してるようで
「え、邪魔した、よね?だから、電話したのに」
と焦っている。そして小声で「誰?新しい男?」と聞いてきた。
「巧、ちょっと落ち着いて。こちら藤木さん。すんごいお世話になってるの」
巧に言っていると、
「どーも、弟さんだよね」
大人な藤木さんはご機嫌な様子で顔の横で手を振っている。その仕草がなんかキザで笑ってしまった。
「何笑ってんだよー」
「うちのかわいい弟、毒牙にかけないでくださいね」と釘を刺すと
「男に興味ないよ」
と嫌そうな顔をされた。そんなやり取りを見ていた巧は、ますます小さくなっている。
「俺、帰ったほうがいいよね」
「どうせ終電なくなったんでしょ。どこいくのよ?」
「え、でも彼氏いいの?」
「彼氏、じゃない」