人事部の女神さまの憂い

”本当に欲しいものは何?”

そう聞かれたのが、もうずいぶん昔のように感じてしまう。あの穏やかに笑った顔とか、抱き合った後に自分でつけた噛み跡を撫でながらしょんぼり反省している顔とか好きだったな。と、そこまで思考を巡らせて愕然とした。



好きだった――――――――――――――



そう「好きだった」だ。いつの間にか、もう過去になってる。懐かしいなって思う気持ちはあるけど、もうあの時のようにキューっと胸が締め付けられるような気持にはなってない。自分にびっくりして、なんでだろう・・・・と固まっていると

「侑里、どうした?」

巧が顔の前で手をヒラヒラさせている。

「あ、ごめん、ごめん。眠くなってきたのかな?」

そう言ってごまかすと、ちょっと心配そうにしている藤木さんと目があった。きっとなんでもお見通しの藤木さんは、今私が柏木さんのことを考えてたことに気付いたに違いない。


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