人事部の女神さまの憂い
ハーフパンツと白Tシャツ一枚でも絵になるな、と一瞬見とれてしまっていると、どうした?と首をかしげている藤木さん。我に返って
「寒くないですか?」と聞くと
「たしかに。次はパーカーも持ってこないとな」
とエアコンの温度を勝手にあげている。この人なんか自分家みたいに過ごすなと思いながらも、それを嬉しく思っているとピザが届いた。
結局、その日もグダグダ夜中まで飲んでから
「明日も仕事か。帰るのだりい」
と言いながらも着替えを置いて自宅に帰って行った。
その後も週に1回くらいのペースで藤木さんはふらっと残業中にデスクに来ては「30分以内」と横暴な要求をしてくるようになった。こっちだって仕事大変なのに、と悪態をつきながらも藤木さんと一緒にいれる時間が待ち遠しくて、いつ藤木さんが声かけてくれるかなと楽しみにしてる自分もいた。
とはいえ夜まで面接が詰まっている5月のある日。
藤木さんが誘いに来たものの、とうていその時間には出れそうになかった。
「今日、ほんと無理です。明日も朝からずっと面接だし」
泣く泣く断ると
「じゃあ鍵寄越せ」
とんでもないことを言って来た。