人事部の女神さまの憂い

びっくりして、え?と聞き返すと

「鍵だ、鍵」と言って手を出している。なんだ、この人と思ってまじまじ見ていると

「お前、何時になる?」と質問をされた。

そっちに気を取られて

「うーん22時までには出たいです」

「じゃあ、軽くつまめるもんつくっといてやるよ」

「でも、その時間から食べると太る」

「すぐ寝なきゃいいんだ」

あくまで自分勝手に話を進めている藤木さん。もうこの暴君モードになっていると逆らっても無駄だと知っているので、大人しく鞄から鍵を取り出して渡すと

「じゃあ早く帰れるようにがんばれ」

無邪気に笑ってくるので心臓に悪い。会社でそんな顔したら若い子になめられるよ、と思っているうちに目的を果たした藤木さんはさっさとオフィスを出ていった。


そして、なんだかんだで22時半前にオフィスを出て家に帰ると、やっぱりそこに藤木さんが居た。

「ただいまです」

「おかえり」

そんなやりとりがくすぐったい。

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