人事部の女神さまの憂い

「じゃあさ、俺がその素敵な旦那様になってやるよ」



「はっ!?」

何を言われたのか理解できなくて藤木さんをガン見すると、仕方ないなというように話始めた。

「お前ん家、初めて行って飲んだ日あるじゃん。あの時さ、なんか幸せだなーってしみじみ思っちゃったんだよね。普段女の家行っても終わったらすぐ帰りたい方なんだけど、あの日はなんか帰るのがもったいないなとか、思ってさ。
 で、お前が先に寝てから考えてたんだよ。ニシユリと、ああやって一緒に年とっていくのも悪くないなって」

「悪くないなって・・・。

 そんなノリで旦那になるとか言わないでくださいよ」

話を聞いて、やっぱり藤木さんにとって私は女じゃなないんだな、と痛感してしまった。なんかやってらんない、とバカバカしくなって視線を藤木さんから暗くなった海に向けてコップに口をつけていると

「お前、本気にしてないだろ」

頭を小突かれた。

「なんなんですか!?」

こっちこそちょっと傷心なんですけど、とイラッとしながら頭に手をやると、その手を掴んでこっち向けよと、藤木さんに向きあわされた。不貞腐れたまま嫌々、藤木さんをみると、じっと目を覗き込まれた。


「なぁ。ニシユリに比べるとちょっと語呂が悪いけど、フジキユリにならない?」


改まって真剣な目で言われて、息をのんだ。

もしかして本気で言ってる?

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