健診診断と恋と嘘

「何でも俺の言うこと聞くから、死ねって言ったら死ぬのかと思ったら突然キレて平手打ちして別れるって言いやがって。
ま、お前みたいな女、こっちから願い下げだけどな」


やめて、と。もうこれ以上傷を抉らないでと言いたいのに、その言葉は喉の奥に引っ掛かって音にならない。


かわりに流れる涙がアスファルトに黒いシミを作っていく。


章が歪な笑みを浮かべた瞬間、小塚さんが私と章の間の壁を思いっきり蹴っ飛ばした。


ガツンと大きな音がして、ビクッと身体を震わせる私を小塚さんが力強い腕で引き寄せる。


「お前……何、女泣かせてヘラヘラ笑ってんだよ」


いつもより更に低い声でそう言った小塚さんを見上げると見たこともないくらいに険しい顔をして章を睨みつけている。


顔が綺麗に整っているだけに、その顔は迫力満点でさすがの章もちょっと小塚さんの凄みを感じさせる迫力に気圧されている。


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