青涙

「着いた…。
ほら、行きな。じゃ!」

ガシッ。

「何!?」

「何!? 何!? 何!?」

変人が私の腕を掴むと、グイグイ引っ張っていく。

「あんた一人で行きなさいよ!
お姉ちゃんはあんたの帰りを待ってるんだから!!
私は平太ん家行くし…って。聞いてる?」

ピーン、ポーン。

「ねぇ、離して!
早く! 離して!」

…ドンッ!!!

玄関のドアが開いたと同時に私の腕は解放。

そして変人に強く背中を、押され家の中に。

「お姉ちゃん…」

「那子…」

「ただいま…で、行ってきま…」

ギューッ。

「お帰り…。那子…」

お姉ちゃん…。

お姉ちゃんに抱き締められた私は…。

「うううう…うー…」

お姉ちゃん…。

お姉ちゃん…。

お姉ちゃん…。

きつくお姉ちゃんを抱き締め返した。


「あい…うっ…つ…本…うっ…当に…帰った…ううっ…の?」

「うん…。
帰った…」

「眠た…ううっ…いから…帰った…うっ…の?」

「そう…みたい」

「あり…うっ…得ない…。あい…東間…うっ…くんは…ううっ…お…うっ…姉ちゃんと…ううっ…二人…うっ…きりで…うっ…誕生…うっ…日を過…ううっ…ごす…うっ…ために…ううっ…来た…うっ…んで…ううっ…しょ? 過ご…うっ…した?」

「過ごしてない…」

「で…うっ…しょ? しか…うっ…も、豪華…うっ…なご…うっ…馳走…うっ…と美味し…うっ…そう…ううっ…な誕…うっ…生日…うっ…ケーキを…ううっ…見た…うっ…はず…うっ…なのに、なの…うっ…にだよ? 眠たい…ううっ…から帰る? おか…うっ…しいで…うっ…しょ?」

「眠くなりやすいのよ…。那子も知ってるでしょ?」

「なら、ここで…うっ…眠れば…ううっ…いい…うっ…じゃん!!」

「那子…。
さすがに…お母さんが許さないんじゃないかな?」

「何…うっ…で?
いつも…ううっ…来る…うっ…度に…ううっ…寝てる…うっ…のは許…うっ…してる…うっ…じゃん!!」

「夜じゃないでしょ?」

「別に…うっ…いいじゃん!
誕生日…うっ…なんだよ? 部屋…うっ…で一人…うっ…なんて…ううっ…可哀想…うっ…じゃん!」
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