冷徹社長の秘密〜彼が社長を脱いだなら〜
止まらない、言葉が止まらない。商品を落としただけでなく、踏んで拾わないなんて。許せない。


「いい加減にしなさいよ?そんなに拾いたいならあなたが拾えばいいじゃない。ほら、店員なんだから早く拾いなさいよ」


顎で指図までされ、本当に限界だった。でも、財布に罪はない。女性の前にしゃがみ込み、財布を拾おうとした時だった。


「痛い!」


「店員ごときが私に刃向かうなんて、調子に乗るんじゃないわよ!」


私が差し出した右手をヒールで思いきり踏みつける女性。見下したその表情はまるで般若のよう。


負けない。諒をネームバリューで扱い、散々好きなようにしたこの二人を許さない。


「もう、やめてください。私の教育が至らないばかりに申し訳ありません。再教育しておきます。ですから今日のところはお引き取りください」


私が声を荒げて叫ぼうとしたのを止めたのは三宅さんの土下座だった。事を荒げたくないと思った専務は、今日のところは帰るぞと渋る娘を引っ張り、店を出て行った。
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