冷徹社長の秘密〜彼が社長を脱いだなら〜
「みぃちゃん、ハイヒールは本当に凶器にもなるんだよ。実際うちに来た患者さんで、満員電車の中でハイヒールに踏まれて骨折した人もいるんだ。だからみぃちゃんの手もそこまで腫れてるのはそれくらい強い力で踏みつけられたってことだよ」


「それでも、私は財布が踏みつけられるよりはいいと思いました」


「なんでそんなにいい子になるの?」


私の返答にそう返した西原先生は、急に車を路肩に停めた。そして、ゆっくりとシートベルトを外し、私に覆いかぶさり、私の顎をクイッと上げて顔を近づけた。


「最初から気になってたんだよね。たかがバッグや財布を自分の身を呈してまで守るなんて、やりすぎだなって」


「・・・西原先生は、自分の好きなものが目の前で踏まれそうになったらそのまま黙って見過ごすんですか?私は、ジョルフェムが好き。ジョルフェムの商品が好き。ただ、それだけです」


私の答えに西原先生はブハッと笑って「ごめんね」と謝り、運転席に戻った。


さすがに諒以外の男の人とあんな至近距離で話すことはないけれど、びっくりするくらいドキドキすることも意識することもなかった。


「それにしても、みぃちゃん。一応僕、イケメンの部類に入るんだけど、あんなに至近距離なのに顔を赤らめることもなかったね。あーあ、隙あればと思ったのにな」


「ないですよ。私の頭の中は諒のこととジョルフェムのことしかないので。だから信じてください。諒のこと、本当に好きで大切ですからね」


「みぃちゃん本当、鈍いのか鋭いのかわからないね。でも良かった。みぃちゃんの目がすごく闘志に燃えてるよ。僕の医者の名誉にかけてもみぃちゃんの右手、明日の仕事に支障をきたさないように治療させてもらうよ」


「ありがとうございます」


「だからさっきのことはリョウに内緒ね。バレたら殺される」


そう言って怯えるふりを見せた西原先生は、シートベルトを締めなおして、エンジンを掛け、再び車を病院へと走らせた。
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