冷徹社長の秘密〜彼が社長を脱いだなら〜
「お騒がせしてすみませんでした」


「・・・最近の幼馴染はキスもするんだな」


涼が帰ったあと、お風呂にでも入ろうかと考えていると社長がまたあの低い声でそう言った。ヤバい。


さすがにあれは言わなくても良かったかもしれない。チラリと社長を見ると悪意のこもった笑みを浮かべていた。


「みぃ、少し話をしようか?なんなら、俺の部屋で」


「お、お風呂に入ってきまーす」


自惚れるな。期待するな。


それなのに、やっぱり期待してしまう。あんな風に涼に言ってくれるなんて思いもよらなかった。でもたとえ、あれが涼を納得させるための嘘でも幸せだと思える。


いつまでもここにいるわけにはいかない。正式に店長になったら社長に気持ちを告げよう。そして、失恋してこの家を出て行こう。



それまで、あと少しこのシンデレラストーリーに酔っていたい。社長に捕まって腕の中に閉じ込められながら決意を固めた。
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