冷徹社長の秘密〜彼が社長を脱いだなら〜
こっちに友達もいない私は、あまりにも社長への違和感が拭えなくて、そんなことばかりを考えていると仕事中だというのにぼうっとしてしまった。そして三宅さんにバックヤードに呼ばれてしまった。


「桜木、仕事中にぼうっとしすぎよ。今日はたまたまお客様が少ないからミスには繋がらなかったけれど、ちょっと仕事に集中しなさい。それとも何かあったの?」


そう聞かれ、誰にも相談できなかった私は三宅さんに言ってしまった。本当に本当に違う。でもどこが違うのかがわからない。服装は私の好みだし、スキンシップも変わらない。


「ねえ、桜木。今日二人で飲みに行きましょ。桜木の恋バナ、私に聞かせてよ」


「い、いいんですか?!」


「もちろん。その代わり、この後はちゃんと仕事に集中すること!しっかりしてよ、次期店長」


初めて、職場の人と二人で飲みに出かけられる。しかも憧れの三宅さん。嬉しくて顔がにやけてきた。

三宅さんが了解してくれたので仕事中だけれど社長に今日は仕事場の人と飲んで帰りますとだけ連絡を入れて、私は売り場に戻った。


仕事終わり、三宅さんと向かったのはショップ近くにある雰囲気がオシャレな焼き鳥屋さんの華。

薄暗い照明のカウンター席で私は杏酒、三宅さんは日本酒を頼み、櫛を何本かと鳥刺しを頼んだ。

「で、仕事に支障きたすくらい何を悩んでるの?彼氏とうまくいってない?でも毎日迎えに来てくれているわよね?」


「あの、実は・・・」


さすがに相手が社長だということは伏せて、話せるところだけを三宅さんに話した。
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