アンフィニッシュト・ブルー(旧題 後宮)

蒔田くんの冷たい言葉に、一瞬驚かされた。しかし、やがて落ち着きが戻ってくると、私は頷いた。

「そっか……」


父がいなくなって以来、私はずっと一人だ。
一人は寂しいけれど、その分自由もある。

例えば虎徹を家に入れるのに家族の同意は要らないし、不意に玄関でブロックを踏むこともない。家族に予定を狂わされることもない。休みの日は好きな時間に起きて好きなことをする。
そのかわり弱ったときも一人だが、一人ゆえに家事の手を抜き回復するまで寝ていようと思えばそこも自由だ。一晩中咳をしていたってうるさいとも言われないし、汗まみれで寝込んでいる姿を誰かに見られることもない。
私は一人が楽だった。ある意味蒔田くんと同類なのかもしれない。



私は無意識に店の天井を見上げた。

よく考えてみれば、私はこの自由な生活にすっかり慣れきっていたというのに、ミハイルとの暮らしは意外とすんなり受け入れた。子どもと一緒にしてはいけないのだろうが、蒔田君はわが子にさえ最後まで慣れることができなかったようだ。

その一方で私はつい最近家に匿った、友人でも恋人でもなく、まして我が子とは程遠い外国人の青年をもう受け入れている。それどころか彼がきちんと朝食をとれたかどうか案じる気持ちまである。
これも人の相性というものなのだろうか。
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