アンフィニッシュト・ブルー(旧題 後宮)



税関も通らず、出国審査も受けることなく私達は黒いリムジンに乗ったまま滑走路に入った。


こんな事ができる人がいるなんて。

井出さんと高坂さんは私達の車に同乗していた。
一週間ずっと一緒にいたせいで、彼らは少しだけ私に打ち解けた話をするようになった。けれど、今日は朝、顔を合わせたときからずっと緊張した顔をしていた。

私も不安だった。彼らもそれは同じらしい。誰も、いつものように雑談を楽しむ余裕はないようだった。


今日はいよいよカガンに向けて出国する日だ。

ミハイルのために用意された専用機はすでに人が乗り込むのを待つだけの状態だ。すでにカガン人らしい顔立ちの男性が数人、タラップの下でミハイルを待っている。


「ハルカ」

ミハイルが座席に置いた私の手にそっと指先を重ねた。
目が合うと、ミハイルは優しい瞳で私をじっと見つめた。

「何があってもあなたは僕が守るから、心を楽にしていて」

整いすぎて人工的にさえ思えるその美貌に花の咲くような笑みが広がった。
彼は嬉しそうだった。

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