アンフィニッシュト・ブルー(旧題 後宮)

プライベートジェットどころか、飛行機に乗ったことすらなかった私はきょろきょろと周りを見回し、肩にかけたバッグをどうすればいいのか、座っていいのか立っていればいいのか、それすら判断がつかない。



「どこかのホテルみたい……。シートベルトはあるの?」

どう振舞っていいのかわからずそう呟いた私に、ミハイルは微笑んだ。
彼はソファの座面に隠れるように作られている金色の固定用バックルとラップストラップを引き出して見せてくれた。

「もちろん、シートベルトはあるよ。安全には十分配慮しているから安心して。
東京からだと15時間のフライトになるから少し疲れるかもしれない。
靴を履き替える?」

私は首を横に振った。

「ううん、まだ……いいや」


なれない空間に緊張しながら、私はミハイルに促されるままゆっくりと座った。


普通の航空機と違って少し短い機体の中にはカガン人の男性しかいない。
彼らはみな軍服を身につけていて、普通の航空機のキャビンアテンダントさんたちとは目つきや態度が明らかに違っていた。ぱっと見た感じではわからないが、自国の王子を守るために銃も持っているに違いない。



小さな窓から外を見ると、撮影はここまでのようで、航空機の機体を半円形に囲むようにしていた報道陣が空港職員の指示で後方に下げられていく。
ミハイルが歩いた赤い絨毯も離陸の邪魔になるのでくるくると巻かれてすぐに撤去されていく。まるで機械仕掛けで行われているかのような統率の取れた空港職員たちの動きだった。


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