もしも、もしも、ね。
喫茶店から出てしばらく歩いていると、
「―――そういや、俺聞いてねぇぞ。」
ふ、とユウが呟いた。
顔を上げるけれど、その視線は私と反対側を歩く准君に向いていて。
一瞬何の話かと思ったけれど、
ずっとはぐらかされていた一つの話題を思い出した。
そっか、望果と准君のこと。
准君も、ユウの言わんとすることが伝わったのか、
一瞬目を瞬かせてから笑った。
「だって言ってねーもん。」と。
あっけらかんと言い放つ准君に心の中で拍手。
その余裕と図太さ、少し譲って欲しい。
私達三人の前をスキップしながら歩く望果に視線を戻しながら、私は聞き耳を立てた。
「でも、本当は望果に口止めされてて。」
「!」
その声で、すぐに視線を戻してしまう。
准君を見れば、目が合って、優しく微笑まれた。
「望果が、私が暁里に言ってからーって聞かねぇんだよ。」
「・・・。」
「まさか、こんな形で暴露するとは思ってなかったけど、これは話の流れだろ?
ちゃんと、望果は暁里に言うつもりだったんだよ。」
ちょっとだけ、拗ねてた。
望果、どうして私に言ってくれなかったのかなって。
私の存在ってその程度なのかなって。
(まぁ、考えてみれば私とユウの話の報告だって失礼な形だったけど)
(いやいや、あれは仕方が無いといえば仕方無いんだけど!)
そんな風に思ってた私の気持ち、見透かされていたんだろうか。
「ま、ちょっと意地悪して暴露しようとは思ってたけどねー。」